概要
院長挨拶
総長特区の創発学術院は、中部大学の建学の精神「不言実行、あてになる人間」のもと、新たな学術の創発を目指して2016年4月に設置されました。創発学術院の特徴は構成する教員の研究分野の多様性です。物理学、数学、心理学、化学、微生物学、教育学、地球環境科学、霊長類学、経済学、生物学、工学、民俗学、哲学などの異なる研究分野のインタラクションによる創発に関心のある研究者が、研究分野を超えて集まっているのが創発学術院の強みです。学術領域を超えた研究者の交流が生み出す可能性は無限であり、各分野内では限界が見える課題に対しても異なる分野の専門家が知恵を出し合って解決に導くような部局になることを期待しています。一例として「脳と心」の研究がありますが、これを単に脳科学と心理学の融合研究とするのではなく、「脳の数学原理」(Cerebri Scientiae Principia Mathematica)研究という観点から研究するということであります。
また、私学と国立大学という異なる組織間での学生、研究者の自由な交流ができる基盤整備も創発学術院が力を入れていることです。私学と国立大学のお互いの強みを強化し、学問の自由な交流をとおして創発学術院の目指す「その先へのブレイクスルー」を実現していきます。実際人事交流でも成果がありました。今年度4月、創発学術院の二人のメンバーがそれぞれ京都大学、東京工業大学へステップアップし、京都大学から若手研究者が一名着任しました。
昨年度は、「創発型頭脳循環」制度を開始し、第1回目として西浦廉政北海道大学名誉教授を客員教授としてお招きし「コモンズの数学」を実施しました。また、飯吉理事長・総長からいただいた「地球のアイデンティティー」を明確にするという命題に対して、「地球の未来フォーラム」を学内メンバーで実施し、その後学内委員に加えて日浦勉東京大学教授と松田卓也ブロードバンドタワーAI2オープンイノベーション研究所長にご参加いただき「地球の未来シンポジウム―人間中心主義を超えて―」を開催いたしました。この2つのイベントは相互に関係していますので、今後その融合系を考えていきたいと思います。今年度は、「創発」という概念をさらに深く掘り下げるために、「不可能問題」に焦点を当てて考えていきたいと思っているところです。学内においても議論を深めさまざまな機会に創発学術院としての発信をしていく所存です。
- 前院長(飯吉厚夫 中部大学理事長・総長、在任期間:2016~2021年度)の挨拶はこちらから
概要
創発学術院の設立
2014年、中部大学は開学50周年を迎え、学園として新たなる活躍の時代に入った。これまでの「総合大学への道」から「開かれた世界レベルのサステナブル大学」を目指した大学改革を進めている。その一環として、2016年4月、新たな学術の創発を掲げた学内外に開かれた高度な研究の場として創発学術院が創設された。その目的は「卓越した研究者を学内外から集めて、既存の領域を超えた新しい学問の開拓と発信を中部大学からおこなう」ことにある。
創設約1年前となる2015年、中部大学の飯吉厚夫総長と京都大学の山極壽一総長(当時)が面談し、両大学の新しい連携の形を模索し始めた。それを中部大学で実現した組織が、この創発学術院である。2016年4月1日、京都大学は「高等研究院」(森重文院長、創発学術院特別招聘教授を兼ねる)、中部大学は「創発学術院」(飯吉厚夫院長)を、いずれも総長特区として同時に設置した。6月2日には、本学で開所記念式をおこなうとともに、中部大学創発学術院と京都大学高等研究院のあいだで正式な学術交流協定を取り交わした。
中部大学創発学術院と京都大学高等研究院との連携は、私立大学と国立大学という垣根を越えて、お互いの利点を活かし相互に強化することを目指した画期的な関係である。この連携により、研究者および教員の交流、先端萌芽研究および国際連携に関わる情報の交換、共同研究・教育および文化的プログラムの共同実施などが可能となった。
その後、そのほかの国内外の研究機関との連携も強化している。現在、国内4機関、国外3機関と学術交流協定を締結し(2021年2月時点)、創発学術院を中心とした研究活動のネットワークがますます広がりつつある。
創発とは何か
「創発」とは、物理学や生物学などで使われる用語であり、部分の性質の単純な総和にとどまらない特性が、全体として現れることを意味している。自律的な要素が集積し組織化することで、個々のふるまいを凌駕する高度で複雑な秩序やシステムが生じる現象、あるいは状態だともいえるだろう。自律的な要素は「個々の研究者」と、高度で複雑な秩序やシステムは「新しい学術分野」と読み替えることができる。創発学術院は、個々の研究者が集い、自由闊達な空気のなかで研究を推進することで、新しい学術分野が自然発生的に創発する場となることを目指している。
主な活動内容
<研究活動>
創発学術院は、多様な学問分野を専門とする研究者が集う場である。
2018年度からは、特に「数学」「野生動物学」「心の先端研究」の3つを重点課題と設定して、それぞれ専門部会を立ち上げた。その後、各部会の活動内容を精査し、2021年度からは「数学専門部会」「生物専門部会」「こころの専門部会」へと発展させた。専任教員が中心となり、各部会に属する研究者が専門分野の研究を深化させるとともに、諸分野融合による新たな学術の発展に向けて精力的な研究活動をおこなっている。
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<アウトリーチ活動>
大学という学びの場では、優れた研究こそが最良の教育だといえるだろう。創発学術院は、真に学びたい者が世界最先端の学問に触れることのできる場を提供するべく、学内外から講師を迎えて「創発セミナー」や「学術レクチャー」と題した公開セミナーを開催している。また、一般にも広く開かれた公開シンポジウムを開催し、研究や学問についてのアウトリーチ活動を推進している。
それ以外にも、数学の面白さを伝えるための「数学キャラバン 拡がりゆく数学in春日井」、あるいは併設中学校、高校の生徒を対象とした「特別講義」や「特別講演会」などを通じて、若者が学問や科学に親しむ機会を提供している。