第4回 学長コロキウム「未来を拓く高温超電導送電 ―石狩での実験の成果と今後―」
未来を拓く高温超電導送電 ―石狩での実験の成果と今後―
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■講演1
「高温超電導技術がカーボンニュートラルとSDGsに果たす役割」
講師:本島 修
学校法人中部大学理事・学事顧問
石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(I-SPOT) 理事長
概要:飯吉理事長が心血を注がれた結果、経済産業省の予算の獲得につながり、北海道石狩市でプロジェクトが進行する10万kW級の送電能力を持つ液体窒素冷却による石狩高温超電導直流送電システムは、経産省承認の技術組合を実行組織として2013年に建設を始め、2017年に従来の交流送電システム(注:常温)と比べて送電損失を1/10まで低減化できることを実証するなどの所期の成果を挙げて世界的にも高く評価されている。昨年4月からは技術組合を中部大学が所掌して一層の活性化が図られており、現在もその社会実装を目指した低コスト化の検証、落雷・液体窒素喪失事故などに対する安全スタンダードの構築などを目指した過酷試験と、1000kmを超える海外を含む長距離送電線網の構築やデータセンターと再生エネルギーソースとを接続するためのビジネスプランの策定などの複数の活動を行っている。送電の高効率化による炭酸ガス排出量の大幅な削減に効果が大である高温超電導直流送電システム(SCDC)の社会実装によりSociety 5.0の実現をより現実のものとすることができ、高度なエネルギー社会の構築が可能となる。その戦略についてもご紹介する予定である。
■講演2
「高温超電導の面白さとその応用」
講師:筑本 知子
中部大学超伝導・持続可能エネルギー研究センター 教授・副センター長
概要:高温超伝導材料(HTS)は1986年にIBMチューリッヒ研究所のベドノルツ博士とミュラー博士によって最初に発見された。(彼らはこの発見により、翌年1987年にノーベル賞を受賞した)。それまで超伝導現象は−250℃以下の極低温に限られた現象であったが、このHTSの発見により、我々にとって比較的身近な液体窒素温度(−196℃)でそのユニークな特徴である「抵抗0」が比較的容易に利用できることになった。。
その一方で、材料研究者たちを悩ませたのは、HTSが3から4つの元素を含む金属複合酸化物、つまりセラミックスであることである。抵抗0を利用する上では、「線材化」が必要であるが、金属のような延性・展性をもたないセラミックスで「線」を作ることには様々な工夫が必要であった。さらにHTSは層状の結晶構造をもち、電気伝導性が層方向と層に垂直方向で大きく異なるという問題もあった。それらの問題をどのように克服し線材化したか?実はその克服に関わる技術は日本で発案されたものが多い。
講演では、HTS材料のユニークさや線材化プロセスについて、1986年のHTS発見当初から材料開発に関わり、線材プロセスの一端も担った経験談も踏まえながらご紹介するとともに、液体窒素温度で超伝導現象が直接見ることができることの魅力とこの材料を使った応用がどこまで進んでいるのかについても解説する。
■講演3
「石狩高温超電導施設による超電導送電の社会実装研究」
講師:井上 徳之
中部大学超伝導・持続可能エネルギー研究センター 教授
石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(I-SPOT) 専務理事
概要:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、今後飛躍的に発電量の増加が見込まれる太陽光・風力などの再⽣可能エネルギーに基づく電力を、高効率で遠距離に送電するためにはSCDC送電が不可欠である。現に、発電量の局所的な増加によるブラックアウトを避けるために国の制度で出力抑制(電力会社の代理制御や司令)が実施される時代になっており、広域の大電力低損失ネットワークの構築が急がれる好事例と言える。石狩超電導・直流送電システム技術研究組合(i-SPOT)では、多くの利点を持つSCDCの社会実装を一層進めるため、昨年度は、2015年の実証試験以降6年間休止状態にあった石狩の500m設備(line 1)を再稼働し、耐久性を調べた。同装置は、3年前の北海道胆振東部地震を体験したにもかかわらず断熱層の真空漏れはなく、各種性能の劣化のないことを確認できたことで、震災に強いことも示された。また、コロナ禍の状況に留意しながら以前より少人数・低コストでの運転を実現し、将来の高効率化にむけて必要なデータが取得できた。省スペースで地中埋設可能なSCDC大電力ネットワークの構築は社会の一大資産の構築を意味しており、その開発は問題解決型の重要技術であると言える。今年度からは、安全性試験(事故を想定した過酷試験を含む)に取り組み始めている。本講演では、中部大学が中心となって推進していくSCDC社会実装に関する各種試験研究並びに新たなビジネスモデルの開発のための研究開発についての今後の計画を紹介する予定である。
主催:中部大学
共催:創発学術院、超伝導・持続可能エネルギー研究センター
日時:2022年9月13日(火)15:30~17:00
会場:不言実行館アクティブホール、Zoomウェビナー(ハイブリッド開催)
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参加登録:https://forms.gle/NohFmdpEVXt1U2Ma9
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